吐き気があるときに疑われる疾患
食道がん・胃がん・大腸がん
食道がん・胃がん・大腸がんなどの消化器がんは、初期の段階では特有の症状はありませんが、進行して食べ物の通り道が詰まってしまうと吐き気の原因になります。消化管は口から肛門に至るまで1本の長いホースのようになっていますが、どこかでぎゅっと握りつぶされると下に落ちていけなくなった水が逆流してくるようなイメージです。
吐き気の症状が長期化する場合や、食欲の低下や体重減少、貧血、黒色便、血便などを伴う場合は、早急に胃カメラ・大腸カメラ検査を受けることをお勧めします。
逆流性食道炎・バレット食道
胃酸の逆流による前胸部の不快感が、吐き気として感じられる場合もあります。特に夜間〜明け方にかけて症状が強い場合や、胸やけ、呑酸症状をともなう場合は逆流性食道炎を疑います。
また、胃酸逆流が慢性化すると細胞の変化を引き起こし、バレット食道と呼ばれる状態に変化することがあります。バレット食道はがん化のリスクがありますので、定期的な経過観察が必要です。
感染性胃腸炎
口から細菌やウイルスが消化管内に入り込み、胃や腸の粘膜が傷害されたり、毒素によって嘔吐中枢が刺激されたりすると吐き気を催します。特に吐き気が強いものとして有名なのは、牡蠣を食べた後のノロウイルス感染ですが、それ以外にも、おにぎりなど直接手で触れたものから感染する黄色ブドウ球菌や、生焼けの鶏肉などを介したカンピロバクターなど、種類は実に様々です。吐き気以外に、下痢や発熱などの胃腸炎症状をともなう場合もあります。
アニサキス
胃アニサキス症は、アニサキスに寄生されたサバ、サンマ、アジ、イカ、サケ、カツオなどの新鮮な魚介類を生で食した後に発症します。食後数時間以内、遅くとも24時間以内に激しい腹痛と吐き気で発症し、胃カメラによってアニサキス虫体を摘除することにより、症状は比較的速やかに改善します。
ピロリ菌感染
ピロリ菌は一度感染すると、除菌治療が行われるまで持続感染を起こし、慢性胃炎による胃もたれや吐き気などの症状を引き起こす場合があります。通常は遅くとも5歳くらいまでの幼少期に感染しますが、大人になってから感染した場合、持続感染は稀であるもののAGML(急性胃粘膜病変)を引き起こし、激しい腹痛や吐き気、吐血、下血といった症状を呈する場合があります。
胃・十二指腸潰瘍
ピロリ菌感染やストレス、薬剤の影響により胃や十二指腸に潰瘍ができると、腹痛や胃のむかつき、吐き気などの症状を起こす場合があります。悪化すると出血による貧血症状や、穿孔といって胃や腸に穴があく場合があり、注意が必要です。
機能性ディスペプシア
検査で目に見える異常がないにも関わらず上腹部の不調をきたす病気で、食後のもたれ感やすぐにお腹がいっぱいになる、吐き気、胸やけなど様々な症状を引き起こします。腹部の症状を訴える患者さんで一番頻度の多い疾患です。
好酸球性消化管疾患
好酸球性食道炎・好酸球性胃腸炎の総称で、厚生労働省が指定難病として定める疾患の1つです。食道や胃腸にアレルギー性の炎症を起こし、腹痛や吐き気などの原因となります。植物由来のアレルギーの場合もありますが、原因となるアレルゲンがはっきりしない場合も多く、難治の場合は長期の薬物治療が必要となります。
その他
その他にも、心筋梗塞や脳梗塞、メニエール病、尿路結石、腎梗塞、急性膵炎、薬の副作用などで嘔気を生じることがあります。